2025年現在のアメリカ経済の状況
トランプ大統領が2024年末に就任し、さっそく大胆な政策を展開しています。その中でも世界的に影響の大きかったものは関税に関する政策です。
大胆な?誤った?相互関税の導入
2025年4月に発表されたアメリカの輸入に関する関税は、まず各国からの輸入に関してすべての物品に10%の基本税率を設定。更に各国の輸出入の状況に応じて日本は24%、EUは20%、中国は既存の税率に34%を上乗せして54%と発表されました。
日本に関して言えば24%の税率とは全く根拠のないもので、実施されれば日本の輸出産業に大きなダメージのあるものでした。
この発表により日経平均株価は6000円(38000円→32000円)、ダウは6000ドル(42000→36000)程値下がりしました。24年8月の急落より実体経済に与える影響が読めなかったのもありこの下げは恐怖を感じるものでした。
その後の展開
結局その後各国との話し合いによりまずは3カ月間関税は凍結されました。しかし中国はアメリカに対して報復関税を課し、最終的に関税率は125%→145%にまで引き上げられ貿易戦争の様相を呈しています。
しかしまずは市場は落ち着きを取り戻し、4月下旬現在様子見の状態が続いています。
トランプ大統領は何故このような政策に走ったか?
現在のアメリカの状況を見ると国債金利が高止まり(5%近く)にあるのが非常に経済を圧迫しているのではないかと思います。それなのにインフレ基調が継続し、ドルは下落し、金利による市場のコントロールを失っているように見えます。またそのような高金利の中でも株式は上昇を続け、別のエントリでも書いていますがゴールド価格はついに3000ドルを突破しています。(ここ2年で2倍になっている。 )
アメリカの国債は利付債と並行してゼロクーポン債がかなり発行されています。ゼロクーポン債は割引債とも呼ばれ、額面に対して金利分を割り引いた状態で販売されるものです。償還日には額面通りで償還され、金利分を一括で受け取るのに相当します。
発行側のメリットとしては、毎年の利払いが不要になり、購入側としては一回の購入で複利で運用したのと同じ利回りを得られる所にあります。
単純に言えばアメリカは現在の債務の償還が苦しいので、ゼロクーポン債により将来に借金を繰り延べている状況であると考えられます。貨幣の価値はインフレにより変動しますが、債務は額面から変動しません。よって今現在100万円の借金をしたとしても、20年後に一括して返済するときに200万円で返済しようとも、その時貨幣価値が1/10になっていたら実質100万円借りたのに返済は20万円で済むことになります。極端な例えではありますが、これは事実です。この差を調整するために借金には金利があるのです。貸金金利は常に金利>インフレ率でなければ貸した側が損をしてしまいます。実は固定金利でお金を貸すのは、かなりのリスクを負うことなのです。
2022年頃から高金利の米国に向けて世界中の資金が集中し、ドル高と米国株式の高騰が続いていました。
しかしトランプ大統領就任後は、徐々に風向きが変わりドル安、債券安、株式安のトリプル安の状態が見られるようになりました。
結論:アメリカの債務は限界に近い

各国の対外債務の状況です。アメリカはダントツ多い状況で、25兆ドル、今の為替で日本円にすると3500兆円という途方もない借金を抱えていることになります。そしてこれに5%の金利が掛かると毎年の利払いだけで175兆円にもなります。
ただこれらは特に返済する必要はなく、新たな借金で借り換えをしていけば良いという理屈もあります。しかし利払いは必要なので借金は雪だるま式に増え続けることになります。
その上限が迫ってきているのではないか?という事です。アメリカの経済を立て直し、世界からドルを回収するために国内へ産業を持ち込む、ライバルとなる中国の影響を抑えようとする意図が見て取れます。
今後のアメリカの動向、株価は慎重に見る必要があると考えます。ゴールドや債券の価格を見るに大きな変革の時が近いかもしれません。まずアセットを集中させ過ぎないように、分散して守りを重視したい局面です。