
高騰を続けるゴールド
2025年現在円建てゴールドの価格は1g2万円を超え、2万5千円に迫る勢いになっています。数年前は5千円程度だったのを考えると実に5倍です。
ゴールドは昔からその耐腐食性により宝飾品として利用されています。いつの時代もネックレスなどは不変の人気がありますが、近年では殆ど利用されなくなったものとして懐中時計があります。
懐中時計とは
1900年頃はまだクオーツ時計も発明以前であり、腕時計では無くポケットに入れて持ち歩く機械式の懐中時計が一般的でした。贈答品としても人気があり、工業化が進んだアメリカやヨーロッパで大量に生産されました。その中でも高級機は金側(金無垢)のケースに収められ、美しい彫金が施されたものを所持するのが富裕層のステータスとなっていたようです。
現代においては殆ど利用価値は失ってしまいましたが、その工芸品としての美しさには大変価値があります。また、昨今のゴールド価格上昇により貴金属としての価値も急速に高まっています。私はあまり貴金属として価値を測りたくはないのですが…(数十年の時を経てきた工芸品を失うことになるので。)最近では懐中時計の相場も暴騰してしまいましたので、価格の見極めとして貴金属としての価値を知っておきたいと考えました。
貴金属としての価値の実例
ケースの素材
まず懐中時計のケースの種類として、ゴールド無垢、ゴールドフィル(金張り)、それ以外の金属(シルバーやステンレス)が存在しますが、貴金属としての価値があるのはゴールド無垢のみです。ゴールドフィルはゴールド以外の安価な金属に、薄くゴールドを張り付けたものでメッキよりは層が厚くなりますが、貴金属としての価値は殆どありません。しかし見た目だけでゴールド無垢かゴールドフィルかを区別するのは容易ではありません。手掛かりになるのはケースにある以下のような刻印です。

見た目では区別しにくいのに、ハイコストなゴールド無垢を使用するのですからメーカーは一目でわかるような刻印を付けて価値を誇っているのです。

しかし純度表示が有っても、上記のような「10YEARS」などの表記がある場合はゴールドフィルとなります。これはゴールドの膜厚により耐久性が異なり、「25YEARS」であれば分厚くゴールドを張り付けて25年は下地が見えることなく使えるのを保証しているという意味になります。
全体の重量-ムーブメント類の重量=ケース重量
では実際に価値の推定をしてみます。

例えばこのようなハンターケース(文字盤面にもフタがあり、ガラスを保護している構造。一般的に高級機に採用されていた。)で全体の重量が75gであったとします。この時計のムーブメントは12sと呼ばれるサイズで、直径は約40㎜。その場合ケースの直径は45㎜~50㎜程度になります。

ムーブメント面はこのような感じです。美しい紋様が描かれていますが、素材はニッケルが多く価値は殆どありません。このサイズであればムーブメント本体とガラス、ゴールド以外の耐久性のある金属で作られることが多い竜頭部分の重量を合わせると約40gと推定されます。
全体の重量75g-40g=35gがケース部分の貴金属としての重量になります。
純度が58.5%の場合(14k)≒純金20.5g×24000円≒49万円
純度が75.0%の場合(18k)≒純金26.2g×24000円≒63万円
ゴールドの単価が高くなったので純度によってもかなり差が出ます。
単純にスクラップにしてもこの程度の価値があるので、実際流通する価格は100万円近くになる可能性があります。逆に言えばスクラップ価格で買えたならば非常にお買い得です。

しかしこのような美しい彫金が施されたケースが、ゴールドの差額目当てに鋳つぶされてしまうのは非常に勿体ないと思います。それこそ現代では同じものは二度と製作できないか、とてつもなく高価なものになってしまうと思います。