旧世代の抗がん剤と次世代のがん治療について

旧世代の抗がん剤と次世代のがん治療について

私はバイオ関連銘柄に投資しているので、その会社が持つパイプライン(薬の元となる物質です。)の有効性や発売されたときどのぐらい売れるのか?を予想するうち自然と医薬品についても詳しくなってきました。

今回はそのうち現代の死亡原因の3割にも達するがんについての治療の情報をまとめたいと思います。身内にもがんに罹患する人が出るかも知れませんし、関連銘柄に投資する際も役に立つはずです。

がん治療には様々な方法が有りますが…

ガンとはどんな病気か?

まずガンとは元々正常な細胞が突然変異により異常な分裂を繰り返し、何も機能を持たない腫瘍が出来ることです。主要な臓器や皮膚、脳など体中の至る所に発生する可能性が有ります。
腫瘍が大きくなることで正常な細胞が侵され、体の機能が失われていく事で死に至ります。

どんな治療方法が有る?

現代ではガンに対して様々な治療が選択として挙げられていますが、代表的な物は抗がん剤、放射線治療、外科手術、免疫療法です。

そのように治療法はいくつか有りますが、大前提としてがんはある程度病状が進行してしまってからでは現代の医学では治る見込みは少ないと考えられています。

まだがんが小さく外科的手術で取り除けるならそれが一番良い選択です。

旧世代抗がん剤の効果

例えば乳がんの場合、乳房を温存するために手術をためらい抗がん剤や免疫療法を選択される方も見えると思いますが、治療に使われることがあるシスプラチンを始めとした旧世代のプラチナ製剤は正常な細胞にも毒性を示し、副作用が非常に大きい割に癌細胞を死滅させることは出来ません。癌細胞の増殖を一定抑えるだけです。

ステージIVの患者さんに投与した場合、延命効果はわずか二か月程度だと言われています。

終末期の患者さんにとってはその二か月も重要かもしれませんが、まだ手術で治る見込みのある方が使う選択肢では有りません。

もう十数年も前に認可された薬であり、当時は癌に対応する薬が全く無かった為認可されていますが、現代の尺度で言えば治療効果が有るかは疑わしい程です。

次世代のがん治療薬

最近は癌細胞のみに効果を示す分子標的薬と呼ばれる新しい抗がん剤が出てきています。ハーセプチン等が代表的ですが、これは人間の免疫機能の一つである抗体と呼ばれる仕組みを応用した薬です。

選択制が高く副作用が低い事、元々が人間が持つ仕組みを応用したもので安全性も高く体内で分解されにい、効果が長く続くなど沢山のメリットが有ります。

しかしこの抗体薬は製造が非常に難しく、上記のハーセプチンでも1年間の治療で約200万円と非常に高額です。

未来のがん治療

薬の開発は徐々に薬自体の作用で癌を死滅させようという考えから、人間の免疫を活性化させ癌を退治しようという考えに移ってきています。

癌の元となる変異した細胞は体の中で日々発生していますが、それらが増殖する前に人間が持っている免疫の仕組みで死滅させているので癌になることは有りません。

しかし変異細胞の中にも免疫の攻撃を回避する特殊な変異を遂げたものが有り、それが癌の元になっている事が最近の研究で分かってきました。

その変異した癌細胞の免疫回避の仕組みを無効化し、免疫が癌細胞を攻撃できるようにする免疫チェックポイント阻害剤という薬が最近注目されています。

国内では小野薬品が発売しているオプジーボがそれにあたりますが、副作用も少なく特定の癌種には大きな効果が出ています。

しかしこちらも価格の問題が有り、発売間もない薬と言うこともあり患者さん一人の治療に1000万円以上かかる状態です。

他にも免疫細胞を遺伝子操作して癌細胞にのみ特異な効果を持つ免疫細胞を作り出したり(CAR-T療法と言います。)人間が癌を克服するのももうすぐそこまで来ています。
(ただし今認可されているCAR-T療法の費用は5000万円とも言われています…。更に適応は白血病の一種で、他の治療で効果が無かった場合に限定されています。またCAR-T療法の完全奏効率は非常に高いのですが、やはり再発を完全に防ぐことは出来ないようです。)

今から20年程前に抗体医薬品が出現したことで抗がん剤は大きく進歩しました。今後は低価格で生産できる技術や、抗体薬のような特異性を他の物質で発揮できるような技術が待ち望まれています。

それらが開発されたときもう癌は恐れる病気では無くなっていることでしょう。

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