オンコリスバイオファーマ(創薬ベンチャー銘柄考察)

オンコリスバイオファーマ(創薬ベンチャー銘柄考察)

企業概要

ウイルス学に重点を置いた創薬アプローチで、ウイルス感染症やがんの治療薬を開発している創薬ベンチャーです。

2013年に東証マザーズ市場へ上場し、既に他社から導入した抗HIV薬でBMS(
ブリストルマイヤーズ・スクイブ )と286M$(約300億円)にもなる大型の契約を締結していました。

 

このパイプラインが期待され初値は約3500円になりましたが、その後たった4ヶ月ほどで以下のようなリリースが出されます。

OBP-601 にかかる Bristol-Myers Squibb Company との提携解消について

当社は、1日1回の経口投与が可能な核酸系逆転写酵素阻害剤としてHIV感染症を対象としたPhase IIb臨床試験実施中のOBP-601に関して、平成22年12月14日付で締結した「Exclusive License Agreement」 (以下「本契約」)につき、本日、Bristol-Myers Squibb Company (NYSE:BMY)より本契約を解約 する旨の通知を受領いたしましたのでお知らせします。

オンコリスバイオファーマIR資料より

なんと一番期待されていたパイプラインが契約解消になってしまいました。300億円にもなると思われたライセンス収入も全て白紙です・・・。当然株価は下げ続け600円前後を数年に渡って彷徨う事になります。

しかしHIV治療薬は他社から導入したもので、オンコリスの独自創薬プラットフォームから生まれたパイプラインがまだ残っています。

遺伝子情報を改変したかぜのウイルスを腫瘍内で増殖させ、抗がん剤として作用させるテロメライシンという薬です。

ウイルス療法とは?

ウイルスといえば病気の原因…最近ではがんもウイルス感染によるものがあるとまで分かってきました。そんなウイルスをがんの治療の為利用してしまうのが、オンコリスの言うウイルス療法です。

そもそもウイルスとは何か?

実際正しく理解できている人は少ないのではないでしょうか。細菌と言われる大腸菌や食中毒の原因となるサルモネラ菌等とウイルスは大きく違います。

大きさも違いますし、構造も全く異なっています。最大の特徴は細菌は自己で増殖が可能なのに対して、ウイルスは自己増殖能力を持っていない事です。

細菌は食品の表面で自立的に増殖し、食中毒を引き起こします。インフルエンザのウイルスなどは生物の体の中に入り、その機構を巧妙に使って自己を複製させています。ウイルスはDNAとそれを守るたんぱく質の殻で出来ており、DNAはその殻を作る為の遺伝情報です。非常に簡素で、洗練された無駄の無い構造をしています。これを生物と言うか?はずっと議論されている事の1つです。

人間はDNAからたんぱく質を作る工場を細胞の中に持っています。これによって皮膚や髪の毛などが作られるのですが、ウイルスはその工場を乗っ取り、ウイルスが持つDNAからたんぱく質を作らせ増殖に利用するのです。

オンコリスのテロメライシンはがん細胞の中だけで特異的に増殖し、その細胞を殺してしまう遺伝子改変ウイルスです。その作用機序を聞くと何かかなり怖いですね…正常な細胞にまで感染して増殖したら大変なことになってしまいそうです。

確かがん治療に使うウイルスが突然変異して人類滅亡の危機になるような映画有りませんでしたっけ?

実際の効果

テロメラインシンは実際に人に投与する臨床試験が行われていますので、その結果を見てみます。

臨床効果については、評価可能な 12 例中腫瘍縮小は 11 症例に認められ(完全奏功(complete response; CR)8 例、部分奏功(partial response; PR)3 例) 、客観的奏効率(objective response rate: ORR)は 91.7%でありました。臨床的完全寛解(clinical complete response: cCR)は Stage I では 83.3% (5/6)、Stage II/III では 60.0% (3/5) でみられています。cCR が得られた 8 症例(66.7%)では、生検あ るいは剖検組織で悪性所見は見られませんでした。比較すべき歴史的対照(historical control)とし て、日本食道学会データにおいて放射線治療のみを受けた症例で(2009~2011 年、2352 例中 123 例) の cCR 率は Stage I で 56.7% 、Stage II/III で 26.8%であり、テロメライシンの上乗せ効果があると 考えられました。

岡山大学のプレスリリースより

完全寛解とは腫瘍が完全に消失したことを表しますが、テロメライシンを投与した場合放射線単体と比べ割合が増えており効果があることを示唆しています。しかし症例数が少なすぎる為、放射線単体の治療効果が強く出ただけの可能性も有ります。

解決すべき課題

この試験では治療用ウイルスを内視鏡を使って患部に直接投与しています。これは静脈投与では効果が充分に得られないことを示しています。治療すべき箇所に薬を正しく届ける事をドラッグデリバリーシステム(DDS)といいますが、それが確立されていないため直接腫瘍内に投与するしかないのでしょう。ウイルスは基本的に異物として体内の免疫システムに補足され排除されますので、テロメライシンに使われるアデノウイルスもそれを逃れることは出来ません。

中外製薬へのライセンス

内大手製薬企業の中外製薬とテロメラインシンのライセンス契約を締結しています。

がんのウイルス療法「テロメライシン(OBP-301)」に関する 独占的ライセンス契約および資本提携契約の締結について

中外製薬は、日本・台湾における再許諾権付き独占的ライセンス契約の契約一時金として 5.5 億円を支払い ます。また、テロメライシンの臨床試験において一定の効果が確認され、中外製薬が上記の独占的オプション権を行使した場合には、中外製薬がオンコリスに支払う本ライセンス契約総額は 500 億円以上になります。さらに、テロメライシンの上市後は、中外製薬におけるテロメライシンの売上額に応じた販売ロイヤリティを、ライセンス契約総額と は別に、中外製薬がオンコリスに支払います。

オンコリスのIR資料より

契約一時金としては平均的ですが、マイルストン総額500億円はかなりのものだと思います。しかし詳細が明記されていない為、大半は販売マイルストン(上市後、売上高が一定の水準に達した場合に支払われる)の可能性があります。

収益も勿論ですが、ウイルス療法の効果が認められ大手が契約を結び、更に資本提携までしてくれたのが非常に大きいのではないかと思います。

その他のパイプライン

テロメスキャンというテロメライシンの腫瘍特異性を生かした診断システムも開発しています。クラゲの発光遺伝子を組み込んでがんを発光させ、診断するものでMRIやCT単体より高解像度での診断が可能なようです。

しかし診断領域は血中マーカーやRNA診断などスループットの出せる方法が開発されてきていますのでこちらは期待薄ではないかと考えています。

テロメライシンは導出済みであり効果も期待できますが、他に柱となるパイプラインが無くハイリスクと考えます。今後中外製薬がオプション権を行使するかどうかに注目しています。

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