創薬ベンチャー銘柄考察:メドレックス

創薬ベンチャー銘柄考察:メドレックス

企業概要

既存の経口薬、注射剤を皮膚に貼り付ける経皮吸収製剤として開発しているベンチャー企業です。創薬というよりドラッグリポジショニングでしょうか。既に上市されている成分の投与方法を変更するだけなので、正しく血液中に成分が行き届けば効果が出る可能性が高く臨床試験の突破率も高いと考えられます。

経皮吸収製剤にするメリットは注射剤であれば医療従事者以外でも投与が可能、徐放作用により長く効果が持続、経口薬では飲みすぎや飲み忘れの防止などが挙げられます。

また欧米で鎮痛薬として使われているオキシドコン製剤は麻薬的な性質を有するアヘン類似物質であり、乱用や誤用が問題になっています。それを解決する為に麻薬成分の抽出が不可能な貼り付け剤としての利用を目指しています。

経皮投与技術

ITLS(Ionic Liquid Transdermal System)

イオン液体を用いたメドレックス独自の経皮製剤技術です。皮膚は外界と体内を隔てる優秀なバリア機能を有しており、分子量が小さく脂溶性が高いなど特定の性質を持った物質以外を皮膚から浸透させて投与することは非常に困難です。

それを特定のイオン液体を用いる事で実現させるのがITLSです。浸透圧の違いなどを利用しているのでしょうか?

NCTS(Nano-sized Colloid Transdermal System)

ナノコロイドを用いた製剤技術です。正直コロイドとは何か?をwebで調べてもはっきりしたものが出てきません。有る程度の分子同士が結合した状態のようです。何故それで皮膚浸透性が上がるのかは、更に分かりません。

マイクロニードル

これが技術としては一番分かりやすいですね。微細な針により肌を守っている角質層と表皮層に穴を開け、薬効成分を浸透させます。痛みを感じる神経は更に皮膚の深いところにある為、痛みを感じにくくなっています。低分子薬より巨大なウィルス抗原なども浸透させることが出来るので「貼るワクチン」として利用できる可能性があるようです。

パイプラインの状況

リドカイン・テープ剤(MRX-5LBT)

局所麻酔薬の一種のリドカインのテープ剤で、帯状疱疹後の神経疼痛治療薬とし て開発中です。メドレックス社の中では最も開発が進捗している パイプラインであり現在三相( Lidodermとの生物学的同等性を検証する試験)が完了した状態です。2020年に承認申請が予定されていますが、FDAからは追加でデータを要求されているようで申請できるかどうかは少し不透明な状態です。また複数の後発品が既に存在し、薬価も下落しています。製造販売を行う導出先も決まっていないので、先行きとしては不安定です。

チザニジン・テープ剤(CPN-101)

肩こり緩和等にも用いられる中枢性筋弛緩薬であるチザ ニジンに ILTSを用いて経皮製剤化 したものです。貼り付け剤の叙放作用により血中濃度が安定し副作用が生じにくく、長く効果が続くとされています。 米国のCipla社へ導出済みでマイルストン総額は30m$です。米国の市場規模は800m$とされており、1/3程度が貼り付け剤に置き換わる可能性があると見れています。現在貼り付け剤を他に開発している企業はありません。こちらのほうが開発フェーズは低いですが、有望に思えます。

オキシコドン・テープ剤(MRX-1OXT )

市場規模と話題性は最大のパイプラインです。米国内のオピオイド市場は8000m$にもなり、企業概要でも述べたようにその乱用対策が急務となっています。P1aが完了しP1bの準備段階となっています。当たればかなりでかいですが、現状のデータからは正確な評価は難しいと考えます。

国内メガファーマとの提携

第一三共、武田薬品と共同開発、技術提携していましたがどちらもメドレックスの技術が使用できる水準に満たなかったとの事で解消となっています。これは独自技術を売りにする企業にとってかなりネガティブなのかなと思います。

総評

IRからは基本良い話しか出てきません、株主はその周辺からその企業の技術が本当に信頼できるものかを評価するしかありません。その1つの指標として他の企業がその技術にお金を出すかどうかは非常に重要だと考えます。

パイプラインの治験データではそれなりに効果が認められていますが、FDAが申請に慎重?なのと上記の件からイマイチ信じ切れない感じです。

また手持ち現金も少なく、時価総額が低い為増資も思うように進んでいません。社長個人の資産管理会社から約1億円の第三者割り当て増資まで実施しています。(第三者じゃないですね。)

しかし時価総額が30億円程度だとどれか1つでも上市品が出れば10倍も夢では有りません。そして倒産しない限りそれ以下に時価総額が下がることも無いでしょう。どこかのタイミングで上手く「恩株」を作ることが出来れば、長く付き合うのも悪くないと思います。

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