創薬ベンチャー銘柄考察(ラクオリア創薬)

創薬ベンチャー銘柄考察(ラクオリア創薬)

 

沿革

ファイザー中央研究所が閉鎖されることになった際に、従業員が経営権を取得して(EBO:Employee Buy Out)独立したのが始まりです。

2008年に設立し、その後2011年にJASDAQグロース市場へ株式上場しました。

特徴

元が大企業であるファイザーの研究所なので、その頃から保有している複数のパイプラインが有ります。既に導出先で上市しているPLも含まれており、安定的なロイヤルティ収入を持っています。2019年度には黒字化も予想されています。

この会社の強みとして挙げられるのはイオンチャネル創薬に長けている事でしょう。 イオンチャネルとは細胞の生体膜にあるタンパク質の一種で、生体内の各種イオン(ナトリウムイオン、カリウムイオン)が細胞内へ出入りする経路となっています。この経路を制御することで薬として活用しようというのがイオンチャネル創薬です。疼痛や循環器、消化器官など市場規模の大きな創薬ターゲットを有しています。特に疼痛の分野では未だ薬効の優れた薬が無く、ファイザーの販売する神経障害性疼痛を適応としたリリカは治療満足度が低いにも関わらず国内の医薬品売上高は1000億円にもなっています。

 

パイプライン一覧

子会社の持っている物も含めるとかなり数が多いので、ここでは私が気になっているものに絞ってまとめます。

カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(Tegoprazan)

胃食道逆流症(胃酸が逆流するいわるゆ胸焼け、胃の不快感)を適応とした薬です。上場前から韓国のCJヘルスケアに導出されており、2019年についに韓国国内で上市されました。

Tegoprazanは、当社が創出したカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(Potassium-Competitive Acid Blocker : P-CAB)と呼ばれる新しい作用機序の胃酸分泌抑制剤です。P-CABは、胃食道逆流症(GERD)治療 の第一選択薬であるプロトンポンプ阻害剤(PPI)とは異なるメカニズムで、PPIよりも速やかにかつ持続 的に胃酸分泌を抑制することから、PPIに代わる新しい酸関連疾患治療薬となることが期待されております。

ラクオリア製薬 2019年3月1日 IRリリースより

従来はPPI( Proton Pump Inhibitor:プロトンポンプ阻害薬)が胃酸抑制薬として広く用いられていました。代表的な製品はアストラゼネカ社のネキシウムで、全世界の売上げは1500億円を超える大型薬です。しかし服用が食事のタイミングに影響される、夜間の胃酸抑制効果が充分でない等の欠点が有ります。

2019年3月1日、韓国保健福祉部より新薬に関する保険償還リストの改正がなされ、K-CAB® が韓国で30 番目の新薬として上市されることとなりました。びらん性胃食道逆流症(Erosive Esophagitis:EE)と非びらん性胃食道逆流症(Non- Erosive Reflux Disease:NERD)の2つの適応症を有するP-CABは同薬が世界初となります。「K-CAB® 50mg錠」の薬価は1,300ウォンと決定されました。

ラクオリア製薬 2019年3月1日 IRリリースより

胃酸抑制に関わる薬の市場規模は全世界で2兆円にもなると言われています。同じP-CABの作用機序を持つ薬は他にも有りますが、上記リリースでも触れられている非びらん性胃食道逆流性の適応を取得しているものはTegoprazanが世界初です。日本では武田薬品がタケキャブというP-CABを販売していますが、売上高は550億円、国内医薬品の販売高として10位に入っています。適応が少ないにも関わらずこの売上高ですので、 Tegoprazanのポテンシャルの高さが分かるかと思います。ただし医薬品の市場として大きい日本、北米、欧州への導出は出来ておらず、治験もフェーズ1止まりです。

しかし中国、中南米、ベトナムについては導出先のCJへルスケア社が次々と販売提携を締結しており、この流れは他の地域へも続いていくと予想されます。

このTegoprazan1本だけでも導出及び販売提携が完了している地域の医薬品売上高から、ピークセールス500億円、ロイヤルティ率5%として25億円の売上達成は充分可能と考えています。そして残り3地域の導出が有れば、全世界でネキシウムの売上を超えることも可能ではないかと思っています。

EP4拮抗薬(Galliprant)(動物向け)

動物用医薬品で変形性関節症を適応症状としている治療薬です。既にペット用医薬品の販売を行っているAratana社にライセンスアウトしており、アメリカではEli Lilly社の子会社であるElanco 社が強力なプロモーションで販売しています。その結果生産が追いつかないほどの売れ行きで、販売初年度から25億円を売上げました。これは動物向け医薬品としてはかなり良い立ち上がりといえます。

2019年には欧州での発売も見込まれ、最終的に年間売上高は100億円を超えると考えています。

5-HT2A/D2受容体阻害剤(Ziprasidone )

統合失調症の治療薬でありMeiji Seikaファルマ社に導出済みです。2019年現在、日本で第三相試験を実施中でまもなく結果が発表されます。この薬について は既に海外にてファイザー社が販売しており、開発の成功率は高いと考えます。ファイザー社の売上げは世界で1000億円を超えており、日本国内でも100億円程度の販売が見込まれます。統合失調症を始めとした中枢神経領域の市上規模は非常に大きく、大塚製薬のエビリファイは1剤で何と5000億円を越える売上となっていました。(現在は特許切れに伴うジェネリック医薬品により、大きく落ち込んでいます。)

19年9月追記: Meiji Seikaファルマ社より第三相試験の結果はプラセボと有意差無しと発表されました。今後臨床試験計画を変更し再治験を実施する可能性もありますが、更に3年程度の時間と高額な費用が掛かる為、中止されるものと見込まれます。年間の想定ロイヤルティは3億円~5億円程度なので、中期的には影響なしと思いますが直近で収益に繋がるPLだったので非常に残念です。

選択的ナトリウムチャネル遮断薬

具体的な適応症は決まっていませんが、疼痛領域でマルホ株式会社へ導出しています。前臨床実施中なので上市まではまだ時間が掛かりますが、ナトリウムチャネル創薬の肝とも言える疼痛分野のパイプラインなので非常に期待できると思います。マルホ社は皮膚領域に強い企業なので、塗り薬として開発するのではないでしょうか。 冒頭でも述べましたが、疼痛分野はニーズが有るのに効果の高い医薬品が無いので、臨床フェーズが低い段階でも導出できたのだろうと思います。

名古屋大学 創薬研究科との連携

創薬ベンチャーの収益の源は創薬シーズ(医薬品化合物候補)ですが、大学の研究室と連携することで連続的にシーズを生み出す取り組みをしています。日本の大学での創薬研究は非常に高いレベルにあるのですが、それを収益化する企業が国内に無かったので殆どが海外企業に流れていたのが現状です。今進行中の研究は以下の通りですがバリエーションに富んだものになっています。

  • 難治性神経芽腫の治療薬の開発を目的とした特定の酵素の選択的阻害剤の探索
  • 脂肪由来幹細胞のサイトカインや成長因子の分泌を誘導する低分子化合物の探索
  • 心不全治療薬の開発を目的とした特定タンパク質に対する選択的阻害剤の探索非アルコール性脂肪肝炎(NASH)治療薬の探索
  • 細胞老化を利用した変異型KRAS肺癌の新規治療薬開発
  • 神経再生を指向した特定の酵素選択的阻害剤の探索
  • TRPM8遮断薬(RQ-00434739)の中枢における作用機序の解明
  • 緑内障治療薬の検証

 

直近で予想されるカタリスト

Ziprasidoneの三相成功

2019年前半にMeijiSeikaファルマより結果が開示される見込みです。二相もMeijが実施し、その結果を見て三相に進めた以上成功確率は高いと考えています。

19年9月追記:三相は失敗となりました…。正直ここまで世界的に販売されているのにそれはどうなの?と思います。Meijiさんの治験プランが悪かったように思います…。例えばプラセポ比較ではなく既存薬との非劣勢試験なら通ったかもしれません。

Tegoprazanの米国導出

日本、欧州、米国のうち最も導出可能性の高いのは米国だと思います。日本は既にタケキャブが大きな販売シェアを取っているので、最悪導出は不可能と考えています。米国は既に1相が完了しており、タケキャブの販売もされていないので今のうちに導出契約を締結して欲しい所です。

懸念材料

 JASDAQグロースの上場廃止基準に抵触する可能性

簡単に言うと上場後10年間一度も黒字にならないと上場廃止になります。上場廃止と言っても会社自体が無くなる破産とは違いますので、株主の権利は残りますが流動性が極端に低下し、株券の価値は極端に低下するでしょう。

勿論会社の利益見通しは黒字を達成するようになっていますが、ジプラシドンの三相のように医薬品の開発は何が起こるか分かりません…。ロイヤリティで黒字化できればいいですが、それは間に合いそうに無いので何かしら新規提携による一時金収入が必要だと思います。

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