創薬ベンチャー銘柄考察(そーせいグループ)

創薬ベンチャー銘柄考察(そーせいグループ)

現状有望と思われる創薬関連銘柄を、個別に考察してみたいと思います。

創薬は長く険しい道のりですが…。

そーせいグループ(4565)

バイオ系企業に詳しくなくても、株式投資をしていれば知っている方も多いのではないでしょうか。2016年にファイザーやアラガンなど、世界のメガファーマとの提携をきっかけに大相場を演じたそーせいグループです。株価は4000円から半年程度で26000円まで5倍以上になり、時価総額は4000億円にもなりました。

この上昇の決め手となった材料はアラガン社とのアルツハイマー型認知症に関わる創薬候補物の契約でした。この疾病に有効な薬物は現在でも限られており、世界中の創薬企業が開発を競っています。契約内容は一時金として140億円を受領、将来的に開発マイルストンとして最大730億円、販売マイルストンとして最大2700億円を受け取る可能性という、国内バイオベンチャーの契約としては間違いなく最大の規模でした。

しかしその後は臨床開発の遅れ、更には上記アラガン社との提携が一部凍結されたことにより株価は大きく下落、上昇が始まった4000円程度に戻ってしまいました。(現在は株式が四分割されています、時価総額は950億円)

私はアラガン社との契約をする前からこの企業の株式を保有していますが、現在の株価も割安だと思っているので買い増しを進めています。そう考える理由について以下にご説明します。

メガファーマへ導出したPLが既に上市している

「ウルティブロ」「シーブリ」という商品名でノバルティスファーマから発売されているCOPD(肺の疾患)治療薬はそーせいグループが導出したものです。現在世界中で販売され、その売上高は500億円を超えるまでに成長しています。(元々私は1000億円以上売れると思っていましたが、残念ながらそうはなりませんでした。)年間30億円程がロイヤリティ収入として、そーせいグループの売上になっています。

このロイヤルティ収入というのは権利収入なので、売上高に対しての原価はほぼゼロです。なので売上が伸びるほどそれに応じて利益もそのまま増えていきます。このように大手製薬企業に導出した製品が上市され、数十億円規模の国内の創薬バイオベンチャーでは多くありません。安定した収入があることで事業の幅が広がり、増資の危険も少なくなります。

開発中のPLに有望なものがある

PLとは「パイプライン」の事で現在開発が進んでいる創薬プロジェクトの事を指します。そーせいグループが保有するPLは10本以上も有り、そのどれもが収益化の可能性を持っていますが、最も注目しているのはアストラゼネカ社へ導出したアデノシンA2A受容体拮抗薬(そーせい社開発コードHTL1071、アストラゼネカ社開発コードAZD4635 )です。

アストラゼネカ社はがん免疫療法としてAZD4635の臨床試験を進めています。開発は順調に進んでおり、毎年開発マイルストンとして10億円以上の金額をそーせい社は受領しています。がん免疫療法はノーベル賞でも話題となったオブジーボ(抗PD-1抗体)などがん治療の最先端であり、効果が高く副作用も軽いとされています。オプジーボは抗体という製造が難しい物質で、240mgで40万円と非常に高価ですがAZD4635は簡単に合成できる低分子薬で、薬価は非常に安く抑えられる見込みです。

最近になりアストラゼネカ社は他剤との併用、また複数の部位に出来たがんに対する臨床試験を追加しました。第一段階の治験としては異例の200人程以上にもなる規模で強力に開発を進めているのが分かります。

オプジーボの売上は2017年度に900億円を超える程になっており、薬価の関係でAZD463がそこまで伸びるかは分かりませんがアストラゼネカが複数の部位で適応を取り、薬価が低いことでグローバル展開や処方が増えることも考えると1000億円以上の売上になる可能性も充分有ります。そうなればロイヤルティ率は10%以上になることが公表されていますので、そーせい社は毎年100億円以上のロイヤルティ収入を得られます。

強力な創薬基盤技術がある

そもそも薬とはどうやって創っているのでしょうか?昔は病気になる原因すらも良く分かっていませんでしたので、自然に存在する植物などを経験則から薬として用いていました。(漢方薬などがそうですね。)それから医学が発達し、病気の原因がハッキリするに従い体内にある特定の物質を阻害したり増強することで、病気が治せることが分かってきました。しかしその効果を持つ物質を特定する術が無いので、ランダムに合成した化合物を片っ端から試して使えそうな物を探す一見乱暴な方法が主流となっています。これをHTS(High Throughput Screening)と言います。

そーせい社が持つ技術は、HTSと違いSBDD(Structure Based Drag Design)と呼ばれます。これは阻害や増強のターゲットとなる物質を詳細に分析し、薬となる化合物に必要な構造を決定してから化合物の合成を始めるやり方です。HTSとSBDDでは、目隠しでジグソーパズルを組み立てるか、目で見ながら同じ事をするかぐらいの違いがあると思っています。当然後者のほうが早く正確にパズルを完成させることが可能です。それなら各社SBDDで創薬を行うでしょうが、その為の技術や設備、人員を保有している企業は非常に限られています。今のそーせい社には、その全てが有ると言えます。

強力な創薬基盤技術があれば、原因の分かっている病気に対して薬の元となる物質を早く正確に作製できます。時間と費用ののかかる臨床試験を同時に行うことは出来ませんが、そこは外部の大企業へ導出して進めて貰えば良いのです。それによりマイルストーン収入など、薬を発売するまでに売上を確保することが出来ます。薬の開発成功率は低いがゆえに、バイオ企業を見るうえで一番重視しているのはこの創薬基盤を持っているかどうかです。失敗しても次が創れるか、創れないかは大きな違いとなります。

ただし時間はかかる…失敗する事もある

創薬候補物が実際に患者さんの手元に届く確率は非常に低く、そして開発開始から10年程度かかるのが普通です。 創薬バイオベンチャー全体に言える事ですが、 投資した資金は最悪戻ってこない可能性を考えること、リターンを得るまで数年以上待つ必要があることをまず考えなければなりません。

実際そーせいグループがアラガン社へ導出したアルツハイマー型認知症治療薬のM1作動薬は動物を使った実験の結果毒性所見が認められ開発が凍結されました。それにより株価は大きく下落、一気に半値となりました。しかしそれでもそーせいグループへの投資を続けているのは上記の理由からです。

バイオ系に強いお勧めblog紹介

バイオ系投資家と言えばこの方が一番だと思っています。銘柄に対する考え方が非常に参考になりますし、増資のタイミングも的確に判断されています。

株投資でマイホーム


そーせい社について、企業発信の資料も交えて詳細に解説されています。


昔からそーせい社へ投資されている方で、決算予想など非常に参考になります。

空回りしない投資へ

個別銘柄情報カテゴリの最新記事